能登半島に自生する赤松の木に学ぶ

能登は何もない田舎なのでしょうか?

地元の人に話を聞くと、能登は何にもない自然が美しいだけのただの田舎だと思っている人が多いです。だからどんどん珠洲市を離れて過疎になって行くんだと、もちろん一般的にはそうかもしれません。私は仕事柄、観察と推察、そしていろいろ想像する癖があります。周囲を見渡すといろいろと大事なものを見逃しているようなもったいない気がします。

私が能登に来て目に留まったものの一つに「アカマツ」があります。アカマツは山地の岩場など過酷な地形にも根差します。樹皮が赤く、樹形が美しいアカマツは日本の風景には欠かせません。成長は早く樹高2~30m。新芽は茶色で葉は柔らかく、雌松と呼ばれてもいます。令和天皇の御所の庭にもアカマツが植えられたそうです。そんなアカマツは珠洲市の木にもなっているのです。

そんなアカマツですが、私たちの生活に古くから身近な存在でもあります。

松葉茶: 強壮作用もあり、不老長寿の妙薬とされ、ボケ防止やコリエステロール除去など、健康茶として有名で皆さんもご存じかもしれません。さっぱりとしたのみ味です。

松ヤニ飴: 苦みがありのど飴など気管支系に効くと言われます。禁煙飴としても利用されます。フランスの松脂キャンディーは人気のようです。

松葉サイダー: 砂糖水に松葉を入れ3日ほど発酵(発砲)させます。冷やして飲むと爽やかで美味な軽めの炭酸天然サイダーです。

天然着火剤: 松の木の松脂を多く含んだ硬い部分があります。ファットウッドと呼ばれます。松脂の香りがいい天然着火剤としてアウトドアでは人気です。

雑草抑制: 松の葉はアレロパシー(他感作用)という植物が発する化学成分により雑草の育成を抑制する働きがあります。苔などが霜柱によって傷まないよう庭に松葉を敷き詰める敷松葉という風習もあります。松葉は絡み合うので風に飛ばされません。

チャコールダイエット: 赤松炭はデトックス作用が期待できる炭ダイエットのメイン成分として幅広く使用されています。

たたら炭: アカマツの炭(松炭)は、火付きがよく高温になるため、日本刀の鍛錬や玉鋼を作成するたたら製鉄に使用されます。金属鍛錬や製鉄に必要不可欠な燃料炭です。

赤松炭: 衣類や靴などに除湿 調湿としても使用されます。炭の中でも消臭・吸湿が優れていると言われています。

庭木: 庭に一本アカマツがあればその姿に庭の雰囲気が引き締まります。クロマツと違い洋風住宅やインテリアにも似合います。成長が早く高木になるのでまめな剪定が必要です。

松盆: 栽風雪に耐えた深い味わいが美しい姿を作ります。丈夫で成形がしやすいのが特長です。

松茸: 樹齢が20年から30年のアカマツ林のみに生える高級食材です。

松根油: 松脂を水蒸気蒸留で精油したテレビン油として塗料や医療用の成分となる。油絵具の薄め液としても使用。昔は飛行機の燃料に使用する研究を行っていたようです。

調べてみると古くから沢山の活用例があるアカマツです。利用しない手はないと思います。でもお土産でアカマツ物産を売っているのは見たことが無いです。その他、能登は珪藻土などの天然資源も豊富です。しかし、第二次産業はとても少ない地域です。何にもないという潜在意識に邪魔されないようにしながら、調べてみると身近なところにチャンスがあると思います。

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